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子どもたちの見ている世界



以前、「ホタテ貝」という記事を執筆しました。
https://keimeikan.co.jp/kobanashi/20241101/
要約すると、授業で「ホタテを魚だと思っていた」という生徒の発言から始まり、読書や買い物、博物館見学など日常の多様な体験を通じて、あるいは大人が子どもの知的好奇心を引き出す機会を作って常識を育んでいきましょうという内容です。

その中の一節「“常識”を身に着けるには、“常識”に触れる機会をどのように作るか、ということに懸かってくるのかもしれません。」を読み返していて、「ないなら作ればよい!」と考えました。そこで、今年私が担当するクラスにて「水梨からの挑戦状~教養と常識のあいだ」と称して、子どもたちに常識に触れてもらうプリントを作成し取り組ませてみました。1枚あたり10問で、合計で9枚のプリントです。
もちろん、誰もが答えられるような常識に終始するのももったいないと感じたので、生徒たちにとって馴染みがないようなものも盛り込みました。大筋のコンセプトは「国語算数理科社会の教科書には書いていないこと」。具体的には、体育や音楽などの実技教科の内容や、生活するうえでの知恵やマナーです。

いくつか紹介しましょう。
問2
親子丼とは、割下などで煮た( ★ )肉を溶き卵でとじ、飯の上に乗せた丼物の一種です。空欄にあてはまる語句を、次の中からひとつ選びなさい。
ア とり  イ ぶた  ウ ぎゅう  エ ひつじ
問5
日本において、亡くなった人の遺体を処理する方法として一般的なものをひとつ選びなさい。
ア 土葬(遺体を土中に埋めてほうむる)
イ 火葬(遺体を焼いてほうむる)
ウ 水葬(遺体を川などに流してほうむる)
エ 宇宙葬(遺体をカプセルなどに入れて宇宙空間にほうむる)
大人にとっては当たり前の内容だと思います。
しかし、上記2問はいずれも正答率は100%になりませんでした。1問目が88.9%で、さすがにエの「ひつじ」を選ぶ生徒は皆無でしたが、豚肉と牛肉を答える生徒がちらほら。2問目の正答率は85.3%で、多かった誤答はアの土葬です。

正答率が特に低かったのは、こちらの問題です。
問3
資料1内の、矢印で示した部分のことを何といいますか。ひらがな2字で答えなさい。

正答は「つる」ですが、正答率は5.6%。正しくは「テンプル」と言うそうですが、少々難しくしすぎてしまったかもしれません。
問9
道府県ごとの警察組織は、例えば「青森県警」のように「道府県名+警」という呼ばれ方をしますが、東京都だけは特別な呼び方をします。東京都の警察組織のことをなんと呼びますか。
正答は「警視庁」。正答率は13.9%でした。

個人的に興味深かったのはこちらの問題。
問1
「きつねうどん」は、うどんの上に何が乗っている食べ物ですか。
ア 油あげ  イ あげ玉  ウ 生たまご  エ カレールー
正答率は97.2%と高く、ほぼ全員が正解しました。しかし、興味深かったのはここから。
ただ正解を確認するだけなのは面白くないですし、何よりこのプリントを作成した本意に反するので、「では、イの『あげ玉』が載っているのは何うどん?」と話を振ってみました。まあ少々難しいかなと思って発問したので解答が出てこなくてもそれほど驚きはしなかったのですが、これは知っているだろうと思った「ではウの『生たまご』が載っているのは?」とさらに話を深めてみたところ、これがなかなか答えが出ません。たぬきうどんよりは月見うどんの方が小学生にとって知名度は高いかと思っていたので、答えが出てこないのは意外でした(さすがにエはすぐに答えが出てきました)。


また、もうひとつ興味深かったポイントは「このプリントの出来具合と、普段の各種テストの成績は必ずしも比例しなかったこと」です。4科のテストで優秀な成績を収めるからといって、こういった常識に寄った部分に詳しいわけではないようですし、テストではなかなか振るわないけれども、色々なことを知っている生徒も少なくありませんでした。


このプリント演習を通して再認識したことは、大げさに言えば、子どもたちの見ている世界は大人に見えている世界とは必ずしも一致しないということです。だから、例えば国語で「文章が読めない」と言っても、その原因は語彙力がないことではなく、書かれている内容が生徒たちにとって親和性に乏しいことなのかもしれません。子どもたちに見えている世界をさらに知ることができたという意味で、このプリント演習は私にとって示唆的で大いに実りのあるものでした。

子どもたちの学力を伸ばしていくうえで、子どもたちがどこで躓いているのかを探るのも教師の務め。それに必要なのは、このプリント演習に限らず多くのことに関して生徒たちと対話することだと思います。今、啓明館は夏期講習の真っ最中。生徒たちに寄り添いながら、あるいは生徒たちの常識のレベルを引き上げながら、彼らの学力を鍛えていきます。