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物知りになりたい



啓明館で授業をするようになって、私の中でひとつの思いが大きくなってきていました。

それは、「もっと物知りになりたい」ということ。

そもそも私の持論として「国語の教師たるもの、万に通じるべし」と思っていますが、それに加えて昨今の中学受験の問題を見ていると、大人がイメージするような“机上の勉強”にとどまらない知識が必要になる問題が少なからず出題されています。例えば「調味料の『さしすせそ』はそれぞれ何を指す?」であるとか、「死のケガレを家に持ち込まないために、体にふりかけるものとは?」であるとか、言ってみれば「常識」の部分、少し言葉を変えれば「文化」、要は教科書に必ずしも書かれていない内容です。
「常識」と呼ぼうが「文化」と呼ぼうが、それらの内容に「なぜ?」はありません。逆から言えば、「なぜ?」と問わないからこそ、それを「常識」とか「文化」と呼ぶのでしょう。
国語の授業の中で扱われることわざや慣用句も、広い意味では日本語における「文化」です。だから、これまでの私は、例えば「覆水盆に返らず」ということわざを知った時に、「このことわざは『一度起きてしまった出来事や壊れてしまった関係は元通りにはならない』という意味だ」と了解するのみで終わっていました。しかし、いざ授業をすることになると、「なぜそのことわざはその意味になったのか」と語源まで含めて知っていた方が、授業に深みが出るだろうな、というのを感じていました(それを子どもたちに紹介するかはさておき)。

だから、そういうことまで含めて「物知りになりたい」という思いがふくらんでいたわけです。

そこで、一念発起、「日本語検定」を受検することにしました。
一度に国語も算数も社会も理科もというとさすがに大変だろうと思ったので、まずは国語の、言語知識の部分だ! と考えました。
「日本語検定」というのは「日本語を使うすべての人のための検定」(公式サイトより)で、日本語を母語としない人を対象とする「日本語能力試験」とは異なるものです。漢字のみならず、敬語・文法・語彙・言葉の意味・表記と、広い領域から問題が構成され、日本語の総合的な運用能力を測る検定で、国語の教師としてはうってつけの検定だと感じました。
どうせ受検するならテッペンを目指そうということで、1級に出願し、そこから受検に向けて勉強する日々が始まりました。
まずは書店に立ち寄って公式問題集を購入。さっそくテキストを開いて問題を解き始めたわけですが、やはり1級ですから、歯ごたえのある問題が並んでいます。解き進めていきますが、領域によって正答率にバラツキがありました。私が弱かったのは漢字と言葉の意味です。四字熟語は特に大変で、見たことも聞いたこともない熟語がいくつもありました。苛斂誅求とか風樹之嘆などなど。そこで、漢検準1級や1級の問題を採り入れて追加で勉強しました。

検定に向けた勉強をするのは単純に楽しかったです。
正解できた時はやっぱり嬉しいですし、不正解した時はやっぱり悔しいです。でも不正解はすなわち自らの知識を増やすチャンスですから、逃すわけにはいきません。そういう言葉遣いができるとかっこいいなと思う言葉を身に着けられたような気がします。


そして迎えた検定当日。
試験開始までの時間は心地よい緊張感に包まれ、試験時間が始まってからも程よく集中して問題を解くことができました。解答用紙にQRのシールを貼るとか、丁寧な字で解答するとか、普段生徒に指導していることを私がおろそかにするわけにはいきません。その部分もしっかり遂行し、全体としてベストを尽くすことができたと感じました。
60分の試験時間はさすがに5分強くらいしか余らなかったのですが、会場には30分で途中退室する強者もいて少々プレッシャーを感じたのは秘密です。
正式な結果発表は7月上旬なのですが、検定の数日後に解答速報が発表されたので自己採点をしてみました。残念ながら1級の基準には達しなさそうです。ただ、準1級の基準を満たせばその認定がされるそうで、準1級はクリアできていそうな予感がしています。中学受験でいうところの「スライド合格」ですね。


検定に向けての勉強、そして実際の受検を終えての最初の感想は、「自分はまだまだ未熟だな」ということ。世の中には私の知らない言葉がたくさんあるし、何となく使っていた言葉には奥深さがあることを知りました。だからこそ、日本語というのは面白いし、その興味深い日本語を、未来を担う子どもたちに教え、あるいは生徒たちと共に学んでいくことは私にとって非常に面白いこと。そういった意味でも、啓明館の教壇に立つことはとっても楽しいです。

さらなる「物知り」を目指してこれからも自己研鑽を継続していきます。水梨のさらなる進化をお楽しみに!