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バトン



啓明館の伝統のひとつ。
それは、卒業生たちが後輩の生徒たちを応援しに来てくれることです。


啓明館での中学受験を経て、進学先で充実した学校生活を送っている卒業生が、今まさに受験に向けてがんばっている生徒たちにいろいろな話をしてくれます。
せっかくなので質問タイムを設け、「今通っている学校のいいところは?」というその学校の生徒にしか聞けないことを教師からぶつけてみたり、「算数はどうやって勉強してた?」「苦手科目はどうやって克服した?」など受験勉強に関する質問を生徒から募ったりします。先輩たちの話を聞いて、後輩たちは学校生活をより具体的にイメージできるでしょうし、時には家庭学習を充実させるヒントをもらうこともあるでしょう。

我々教師としても、中学受験を共に戦い啓明館を巣立っていった子どもたちが、どのように学校生活を送っているのかを垣間見ることができますから、なかなか充実した時間になっています。また、例えば「受験してよかったことは何ですか?」と受験生に尋ねられ、「今の学校に通うことができていること!」なんて卒業生が即答しているのを見ると、彼らを送り出した教師として、えも言われぬ幸せな気持ちになることもしばしばです。


年中、様々なタイミングで卒業生が足を運んでくれるのですが、夏期講習は特に多い時期です。先日も、高校1年生のある男子生徒が訪れてくれました。

思い返せば、受験期の彼はなかなかやる気に火が付かず、保護者も教師もやきもきしていた印象が残っています。授業中も集中力を欠く場面がちらほら見られていたことが、だんだんと思い出されました。
そんな彼ですから、しっかり話せるのかと正直不安でした。しかし、子どもたちの前に立つと、なんと立派に話してくれるではありませんか。子どもたちの質問にしっかりと耳を傾け、答える口調もハキハキとしていて、内容も的確です。立派に成長している姿を非常に好もしく思いました。

ひと通り質問に答えてもらった後、「最後に、受験生に向けてエールを一言お願いします!」と話をふると、彼はこう答えてくれました。

受験が迫った12月・1月に勉強をがんばっても、周りの受験生も同じくらいがんばっているから差はつかない。だから、周りに差をつけるなら、大事なのは“今”なんです。みなさん、がんばってください。

どういう思いで彼がこの回答を口にしたかはわかりません。自分がそうできなかったという後悔なのか、或いは別の何かか。
でもそんなことは大した問題ではないでしょう。大事なのは、そんな風に後輩諸君を鼓舞するような素敵で力強いことを言えるくらいに、彼が逞しく成長していたことだと思います。
この言葉を聞いた受験生たちも、心なしか背筋が伸びていたように感じられました。


こうして卒業生たちが啓明館を訪れてくれるのも、啓明館での受験が充実したものであった証左でしょうし、何より啓明館が彼らの居場所のひとつだったのだと思います。
この、啓明館のバトンがいつまでも次代へ受け継がれることを願ってやまないし、そのためには、啓明館の教師全員が今目の前にいる生徒に全力で対していくことが大切なのだと思います。