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学びて思わざれば



私の趣味のひとつは、読書です。

先日も思いっきり本に没頭したのですが、良書に出会うとページをめくる手が止まりません。先の展開が楽しみで、時間が経つのも忘れて読み進めてしまいます。

もちろん本の内容そのものが面白くて本を読むのですが、本を読むと本を読んでいない時間がより一層豊かになるような気がします。いつもと同じ日常でも違って見えるようになるというか、世界が広がるような感じ。
孔子が言うには「学びて思わざれば、則ち罔し(まなびておもわざれば、すなわちくらし)」だそうです。食べ物を食べても消化しなければ栄養が吸収されないように、本を読んで自分の中で咀嚼しなければ意味がないのでしょう。そして咀嚼するからこそ、人間としての味わいが深まっていくのかもしれません。

そもそも「読書」、すなわち活字を追うという行為は、勉学においてすべての基本になります。国語に限らず他のどの科目でも、日本語を読み、文を理解する。そのための必須スキルですよね。我々が考えている読書の効能は2つ。
①語彙を広げること。知らない言葉に出会うことは、とても大切な体験です。
②世界を広げること。本に書かれている内容は多くの場合未知のことです。
例えば、登場人物の性別が自分と違ったり、或いは時代や国・地域が違ったり。フィクションを読む場合にはそもそも物理法則が違うかもしれません。それらの、いわば「自分の知らない世界」に触れる体験は、読書ならではでしょう。

ですから、啓明館に通う子どもたちには、たくさん本を読んで世界を広げてほしいなと思っています。
そこで、新4年生の担当クラスで子どもたちにミッションを出してみました。ミッションというのは宿題とはまた別の自由課題のようなものです。子どもたちに課したミッションの内容は「宮沢賢治の作品を読んでみよう!」というもの。新4年生のKMノートに『どんぐりと山猫』が収録されていたので、いい機会だと思って子どもたちに呼びかけてみました。

すると、予想以上の反応がありました。
『どんぐりと山猫』を扱った授業の最後でミッションを告知しましたが、ある女の子が「友達と一緒に学校の図書室行く!明日すぐ行く!」と嬉しい声をあげてくれました。
そして1週間後。宮沢賢治の作品を読んだことを私に報告する生徒たちの長蛇の列ができました。
『銀河鉄道の夜』『注文の多い料理店』『セロ弾きのゴーシュ』などなど、たくさんの報告を受けました。中には、どこが面白かったかをレポート用紙にまとめてきてくれる生徒もいました。子どもたちがミッションに素直に反応してくれたことが純粋に嬉しかったし、それが今後の素敵な読書体験につながってくれるなら、こんなに喜ばしいことはありません。

本を読んだからと言って、何かが劇的に変わるということは少ないかもしれません。でも、ひとつひとつの読書体験は些細なものであっても、積み重なれば大きな変化になるはずです。
例えば『注文の多い料理店』であれば、猟師たちが自分に都合の良い解釈をしているのを見てその怖さや愚かさに思いが及ぶかもしれないし、『銀河鉄道の夜』であれば、本当の幸せとは何かを考えるきっかけになるかもしれません。

たくさん読み、たくさん考えること。それも啓明館に通う生徒たちが目指す「学力を以て社会に貢献する人材」のひとつの姿なのかもしれませんね。