先日、担当する6年生男子のお母さんから、国語の成績について相談を受けました。曰く、国語の成績が伸び悩んでいると。どうやら彼は国語そのものについて抵抗感があるんだそうで、家でも国語の勉強をやりたがらないようです。
とはいえ、彼の授業中の様子を見ていても、それほど苦しんでいるような印象がありませんでした。実際、それまでのテストの答案を見てみても、何とかして戦おうとしているのが見て取れます。
私はこんな話を思い出しました。
カマスという魚がいます。水槽を透明な板で二つに仕切り、片方に空腹のカマスの群れを、もう片方にエサとなる小魚を放ちます。するとカマスは小魚を食べようと移動しますが、透明な板に阻まれて食べることができません。いくら挑戦してみてもエサまでたどり着くことができず、そして最後にはあきらめておとなしくなります。
このような状態になった後で、その透明の板をはずし、カマスが自由に小魚を食べられるようにします。喜んで小魚を食べに行く……と思いきや、カマスは全く動かず、いっこうにエサを食べないのです。小魚がカマスの目の前にやってきても何の反応もしないんだそうで、何度この実験をしても同じ結果になるそうです。
思い込みが行動を縛ってしまうという意味で、このカマスの話は我々教師にとって非常に示唆的です。
カマスは自らの思い込みを打破することができませんが、人間は違うはずだからです。
彼も自分で「国語がニガテだ」と思い込んでいるだけかもしれません。できないと思っていると本当にそうなってしまうものです。
そこで私は彼に、「苦手意識を持っている国語だけど、たぶん君が思っているよりももっとできると思うよ」と声をかけてみました。彼は、きつねにつままれたというか、どこかピンと来ていないような顔で話を聞いていました。
国語への苦手意識が先行してしまっているのはきっと彼だけではないと考えた私は、それまでも取り組んでいましたが、改めて生徒たちに前向きな言葉をかけるように意識しました。
少し国語もがんばってみようかな。
もしかしたら、国語少しできるかもしれない。
そんな風に生徒たちが感じてくれることを願って。
生徒たちは、私の期待に応えてくれました。
まず、授業中の解説を聞く様子が、以前とは違って緊張感に満ちたものになりました。家庭でも努力を積んでくれていることが見て取れるようになりました。
そして次第に、制限時間内に答案を書き上げられる生徒が増え、点数も上向いてきました。
もちろん彼も例外ではありません。ひと科目だけ落ち込んでいた国語の成績が、他の科目と遜色ないくらいまで伸びていました。
「できない」と思ったら、できることもできなくなってしまう。
逆に、「できる」と思えばできることは、我々が思うよりも多いのかもしれません。
そして、そんな風に子どもを前向きにするのも教師の仕事です。
だからこそ、私は生徒たちに繰り返しこう伝えたいと思います。
諸君は、自分で思っているよりも素晴らしい能力を秘めています。
「できない」と思い込むのではなく、「できる」と思って問題に取り組んでほしい。
私はこの文章を、夏期講習が始まる直前に書いています。
夏期講習が終わる頃には、啓明館生みんなが、学力面でも精神面でもひと回りもふた回りも融通無碍な成長を遂げていることを確信しながら。
とはいえ、彼の授業中の様子を見ていても、それほど苦しんでいるような印象がありませんでした。実際、それまでのテストの答案を見てみても、何とかして戦おうとしているのが見て取れます。
私はこんな話を思い出しました。
カマスという魚がいます。水槽を透明な板で二つに仕切り、片方に空腹のカマスの群れを、もう片方にエサとなる小魚を放ちます。するとカマスは小魚を食べようと移動しますが、透明な板に阻まれて食べることができません。いくら挑戦してみてもエサまでたどり着くことができず、そして最後にはあきらめておとなしくなります。
このような状態になった後で、その透明の板をはずし、カマスが自由に小魚を食べられるようにします。喜んで小魚を食べに行く……と思いきや、カマスは全く動かず、いっこうにエサを食べないのです。小魚がカマスの目の前にやってきても何の反応もしないんだそうで、何度この実験をしても同じ結果になるそうです。
思い込みが行動を縛ってしまうという意味で、このカマスの話は我々教師にとって非常に示唆的です。
カマスは自らの思い込みを打破することができませんが、人間は違うはずだからです。
彼も自分で「国語がニガテだ」と思い込んでいるだけかもしれません。できないと思っていると本当にそうなってしまうものです。
そこで私は彼に、「苦手意識を持っている国語だけど、たぶん君が思っているよりももっとできると思うよ」と声をかけてみました。彼は、きつねにつままれたというか、どこかピンと来ていないような顔で話を聞いていました。
国語への苦手意識が先行してしまっているのはきっと彼だけではないと考えた私は、それまでも取り組んでいましたが、改めて生徒たちに前向きな言葉をかけるように意識しました。
少し国語もがんばってみようかな。
もしかしたら、国語少しできるかもしれない。
そんな風に生徒たちが感じてくれることを願って。
生徒たちは、私の期待に応えてくれました。
まず、授業中の解説を聞く様子が、以前とは違って緊張感に満ちたものになりました。家庭でも努力を積んでくれていることが見て取れるようになりました。
そして次第に、制限時間内に答案を書き上げられる生徒が増え、点数も上向いてきました。
もちろん彼も例外ではありません。ひと科目だけ落ち込んでいた国語の成績が、他の科目と遜色ないくらいまで伸びていました。
「できない」と思ったら、できることもできなくなってしまう。
逆に、「できる」と思えばできることは、我々が思うよりも多いのかもしれません。
そして、そんな風に子どもを前向きにするのも教師の仕事です。
だからこそ、私は生徒たちに繰り返しこう伝えたいと思います。
諸君は、自分で思っているよりも素晴らしい能力を秘めています。
「できない」と思い込むのではなく、「できる」と思って問題に取り組んでほしい。
私はこの文章を、夏期講習が始まる直前に書いています。
夏期講習が終わる頃には、啓明館生みんなが、学力面でも精神面でもひと回りもふた回りも融通無碍な成長を遂げていることを確信しながら。