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へぇ~



教育業界において、「教師には5つの大事な要素がある」とよく言われます。
5つの要素は五者とも呼ばれ、役者・演出家・易者・医者・学者です。
まず初めに、教師たるもの、無個性ではいけない。個性を発揮し教室を束ねていくべし。ゆえに「役者たれ」。
次に、そのような自らの個性を最大限発揮するために、また、生徒たちを教室の中でヒーロー・ヒロインにしていくために、一様ではない様々なシチュエーションの準備が必要になる。ゆえに「演出家たれ」。
また、生徒たちの将来を見通し、良い状況へ導くことができるようアドバイスをする必要がある。ゆえに「易者たれ」。
さらに、学習においてうまくいかない状況を抱える生徒に「こうすればいいのでは」と適切な“処方箋”を出す必要がある。ゆえに「医者たれ」。
最後に、教師も常に新たな知識を吸収するよう努めるべきだし、百を知って初めて一を教えられる。ゆえに「学者たれ」。

他の4つは話を改めるとして、今回は「学者」の部分を掘り下げてみましょう。

先日こんなことがありました。
ある理系教師が、今度の4年算数の授業で扱う「n進法」を生徒たちにどう教えたらよいかを先輩に尋ねます。我々も教師ですから、相手が生徒だろうが同僚だろうが「教える」ということになるとついつい熱が入ってしまいます。二進法やら五進法やらの話になり、両手で数えられる数の最大値は1023だとか、やりとりは盛り上がりを見せました。

そんな中である文系教師が呟きます。「フランス語の数の数え方って複雑なんですよね」と。調べてみると確かに複雑です。16までは独立した数字なのですが、17~19は「10+7」のように表現します。そして20はまた独立した数字が出てきて、そして69までは英語と同じように数えるのですが、70は再び「60+10」となります。加えて80は「4×20」と表現します(余談ですが、フランスではない国で話されているフランス語はまた別のバリエーションを持っているようです)。

また別の教師が言いました。曰く、ストラヴィンスキーの『春の祭典』は5拍子や11拍子など変拍子が入り乱れるが、全体を通してみれば音楽的に自然な流れにたどり着く。西洋式の記譜法は、確かに言われてみれば、様々なn進法の組み合わせですよね。

私からすればいずれも「へぇ~」と唸らざるを得ない話ですが、よくぞここまで多くの知識を身に着けた教師が集まったものです。n進法から始まった話がロシアの作曲家ストラヴィンスキーまで飛躍しました。

今回の話に参加していない教師ともたくさん話をしますが、どの教師もびっくりするくらい多くの知識を蓄えています。学問的な内容はもちろん、雑学の部分まで本当に幅広いものです。おそらく、冒頭の5つの要素のうち「学者」の部分を追求する中で、自分の担当科目を極めていく傍ら、そこを軸に多様な知識を身に着けているわけです。しかも教師自身がその過程を楽しんでいるはず。そうすると、ついつい他人にも教えたくなってしまうんですよね。

考えてみれば、昨今の中学入試には「自らを取り巻く社会や環境に対する興味関心」など教科書を飛び出した内容が問われるものが少なくありません。そうしたものに対応していくためにも、我々教師が多様な知識を涵養する、すなわち「学者」としての自身を高めていくことが、中学受験を志す生徒たちを指導するうえで必要なことなのでしょう。

生徒たちの更なる好奇心を引き出すために、今日も啓明館の教師は研鑽に励みます。