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ホーム > みずなし・こばなし > たったの2文字

たったの2文字



毎年その年の入試が一段落すると、この仕事を始めてまだ間もない頃のある出来事を思い出します。
2月1日の入試本番まで100日を切った11月、6年生の保護者面談でのこと。
受験の作戦を話し合う面談が終わり立ち上がったとき、お父さんが「ぜひともご指導宜しくお願いします」と、深々と頭を下げたのです。

当時私は二十代半ば。いくつも年上のお父さんが年若い私に礼を尽くす姿に、子に対する親の思いはこれほどかと衝撃を受けたのを今でもはっきりと覚えています。
このとき私は、中学受験に携わる教師の責任の重大さを痛感しました。
そして、中学受験を通して我が子に少しでも成長してほしい、そのために最適な環境を与えたい__そんな「親心」を胸に教壇に立たなければならないと心に刻みました。

時が経ち私もそれなりに年を重ねました。今では一児の父となり、若い時には実感を持てなかった「親心」というものを、以前よりも切実なものとして理解できるようになった気がしています。

啓明館では受験を終えた家庭を対象にアンケートを行っています。
その中の保護者への質問のひとつ「中学受験を終えたお子様に向けて一言メッセージをお願いします」の回答欄には、毎年たくさんの「親心」があふれています。

中学受験、最後まで諦めずによくがんばったね。

今までお疲れさま。中学校という新たなステージでもがんばってね。

中学生になって忙しくなっても、たまには家族で過ごそうね。

受験を終えた保護者から、下記のようなメールもいただきました。

中学受験をすることが正しかったのか、私はこの子の一生を台無しにしてしまったのではないか、本当に申し訳ないことをしたと、日々自分を責めていました。
普通の小学生らしく楽しく過ごすことがこの子には必要だったのではないかと。

娘の成績降下を受け入れることが出来ず、焦りと不安を感じて必死になっていました。勉強しない娘をどうにか勉強させなくては、成績を上げなくては、とガチガチになってしまっていました。

でもある日、気が付いたんです。
この子のための受験なんだと。この子が幸せになるための受験なんだと。
それが本来の一番の願いだったんですね。

(中略)

とても苦しい中学受験でしたが、最後の最後に勝ち取った合格は、娘のこれからの長い人生の中で必ずや力になってくれる経験だったと思います。最後まで諦めなかった彼女は、私の誇りです。

中学受験、万歳です!

※保護者の許可のうえで掲載しました。

「親心」と、漢字にしてしまえばたったの2文字。しかし、その2文字の中には、いくら言葉を尽くしても表現できないような、強く、温かで、確かな思いがあるのだと思います。

世間は入試の結果を、とかく学校の名前や偏差値、他者との比較で語りがちです。
しかし私たちは、なぜ保護者が啓明館を選んでくれたのか、その原点にある「親心」を見つめながら、生徒ひとりひとりにとっての「最良の教育の場」を追求していきたいと思っています。