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今日の確認テストは



いよいよ入試までのカウントダウンが始まり、受験校決定のための個人面談が進行しています。

思い起こせば、うだるような暑さの中で行われた今年の夏期講習。生徒を叱る私の声が、やかましいセミにも負けない大きさで教室中に響き渡ったことがありました。

というのも、ある6年の男子生徒が、指示された課題をほとんどやっていない。当然、確認テストの点数もボロボロ。そのくせ、まったく悪びれもせず、少しだけ書き込みのあるテキストを私に見せて「センセー、ほらこれだけはやったんだよ~」……。そこで、温厚な(自称)私も思わず堪忍袋の緒が切れたわけです。

確かに6年生の夏期講習は授業時間も長く、各教科の課題の量も少なくありません。とはいえ、同じクラスの他の生徒たちは取り組んできている「最重要・最低限」の課題を、彼はやってきていない。それもその日だけのことではありませんでした。
しかも授業のない午前中に何をしていたのかと尋ねると、朝は10時頃に起きて、算数を少しやったと平然と答える。
とてもまだ“受験生”とは言えない状況でした。

私は、今度は穏やかかつきっぱりと彼を諭しました。
「いいか、勉強するのは君自身、受験するのも君自身、嬉し涙か悔し涙を流すのも君自身だ。
自分の人生なんだから、自分で選んで、自分でつかみとるしかないんだよ。でも自分のために勉強する……ってのは、限界が来ちゃう。自分のためではなくて、お父さんお母さんに喜んでもらえるように勉強する、さらには将来、周りの人から有難いと思われる存在になるために勉強するって方が、君の場合には馬力が出るかもよ。」

ただ、残念ながら、直後の彼の態度には大きな変化は見られず、夏期講習を終えました。8月末の塾内テストも点数は芳しくなく、同時期に受けた外部模試もそれ相応の成績でした。

しかし9月末のテスト、そして10月の模試で、彼の成績は大ブレイクします。
嬉しそうに成績表を受け取りながら、彼は私に話しかけてきました。
「オレ、実は、あのときの先生の話を聞いて、このままじゃいけないって気付いたんだ。中学受験やるのか、だとしたら、自分はどの学校が良いのか。親とも長い時間、話をして、サボっていた分を全部やり直したんだ。ずっと言えなかったけど……。」

成績で手ごたえを感じたその時からは、授業前に私の前で「今日の確認テストで8割とるから、見ててね」と高らかに宣言し、有言実行。今度は「今日の確認テストは満点だからね」。そして、有言実行。実際に満点をとった時の自慢気な顔は、自信に満ちて、キラキラ輝いて見えました。

どんな言葉が心に響くのかは相手と状況によって異なるし、教師として経験を積んでも非常に難しいもの。どれだけ話してもすぐ効果が表れるという保証もなく、逆に「え? そんなことで?」とあきれるような些細なきっかけで子どもの心が動き始めることもあります。

私たち教師の仕事の一番の醍醐味が「子どもの変わる瞬間を見られること」であることは間違いないし、子どもたちにとって、その「変わった経験」「努力が報われた経験」が人生におけるかけがえのない財産になるのも確かだと思います。

だから私たちは、どんな場面でどんな時期でも、あきらめずに声をかけ、励まし、期待し続けます。時には彼らの心に土足で踏み込むかのように、本音をぶつけたりもします。
休み時間の様子を観察したり、世間話(?)をしたり、過去問の答案を精査したり。そこから、彼らの心に響く「なにか」を見つけられないかと、話すネタやきっかけを考えながら。

受験会場に入った瞬間の高揚感や、2月1日の入試を午前午後と連敗し、そのときに電話でかけた励ましの言葉で「スイッチが入った」子たちも、これまで何人も見てきました。
2月1日の受験までまだ2か月以上。日々の歩みは着実に進めながら、子どもたちに大きな飛躍が訪れるのを信じて、彼らの背中を見守り、押し続けていきましょう!!