グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



ホーム > 目黒佳菜の啓明館日記 > ツカイドコロ

ツカイドコロ



台風が多くなるこの時期に、毎年思い出すことがある。

数年前のこと。

大型の台風が近づいており、授業をやむを得ず休講にした日があった。もちろん休講決定と同時に保護者には「お知らせメール」を送信。
そして、既に出社していた社員で分担をして、休講を知らせる文章の掲示や問い合わせの対応にあたっていた。


すると16:00を過ぎた頃……

こんにちは~!

エレベーターが開き、生徒が元気に校舎に入ってきた。

「ん?どうした!?今日は休講だよ!」
「え!?そうなんですか?連絡がないので、授業あるのかと思いました!」
「ん!?連絡はしているはずよ!」

そんなやり取りを一通りして、その後、お母さんと電話でお話しすることができた。


なぜ台風の日に校舎に来てしまったのか。

その生徒は祖母と一緒に自宅にいた。台風のニュースを耳にして、念のために母親に連絡をした。しかし仕事でちょうどバタバタしていた母親は我々からの「お知らせメール」を見落とし、「メールきてないから授業あるんじゃない?じゃーね、今ちょっと忙しいから!」と電話を切ってしまったそうだ。

ニュースでは台風の発生に伴い、急激な天候の変化や河川の増水・氾濫、激しい突風に注意するよう、しきりに呼び掛けている。それを見た祖母は「塾に行くのやめた方がいいんじゃない?」と止めたそうだ。

しかし「いや、授業があるなら行くよ!この間先生が、目の前に立ちはだかる壁に立ち向かえって言ってたし!」と祖母の制止を振り切り、啓明館に来てしまったというわけだ。

この話を聞いた時「なんと啓明館っ子らしい…」そんな感想を抱いた。


私たち啓明館の教師は、授業の中でカリキュラムに沿った学習をさせていくのはもちろんのこと、「人生」や「夢」、「挑戦」について語ることがある。また受験を控えた6年生に対しては、大きな会場を借りて生徒を集め、各担当から「最後まで諦めるな!」といった趣旨のメッセージを伝えていくこともある。
その理由は、「夢を持つことって素敵だよ。」「諦めない心を持つと、きっと素敵な風景を見ることができるよ。」「目の前の壁に挑戦していこうよ。」「仲間に優しさを分け与えられる人でいようね。」啓明館で過ごす時間の中で、子だちにそういったことも伝えていきたいからだ。


きっと台風の日に校舎にきてしまったあの子も、そんな教師の話を心に留めて、素直に実行に移そうとしてくれたのだろう。

いまだに「こんにちは~!」と校舎に入ってきたその子の表情を思い出すと、あたたかい気持ちになる。


幸いにもその生徒は啓明館のすぐ近くに住んでおり、雨風が強くなる前に自宅に帰すことができたので本当によかった。

その時は「目の前に立ちはだかる壁に立ち向かえ!」のツカイドコロを少し間違ってしまったけれども、その心を忘れずに大人になるんだよ。