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ホーム > 目黒佳菜の啓明館日記 > ここにいるよ

ここにいるよ



4月の中旬から息子の保育園が原則休園となり、自宅で2人きりで過ごす時間が圧倒的に増えた。育児休暇中ももちろん2人で過ごす時間が長かったわけだが、あの頃はまだ子育てに対する余裕もなくて「貴重な時間を楽しもう」とまでは考えられていなかった。

原則休園が確定して、仕事に対する不安や、仕事仲間に対する申し訳なさはあるものの、息子を預けられないものは預けらない。「育休中は余裕がなかったし、今回はいい機会なのかもしれない。よし、親子で過ごす貴重な時間を楽しむぞ」なんていう風に気持ちを切り替えていた。

しかし育児休暇中の息子がまだ「赤ん坊」だった頃とは決定的に違うことがあった。それは今まさに「絶賛イヤイヤ期中」であること。

毎日毎日、とにかくすべてのことがスケジュール通りにはいかない。

「スプーンを使おうね」とニコニコ差し出した愛情たっぷりのスープ。「手で食べるんだ」とニヤリと言いながら、そこら中をぐちゃぐちゃにしてしまうし

スーパーにさっと買い物に行きたいのに、道の真ん中でライオンごっこがスタート。「危ない」と言って抱きかかえると、泣き始めるし

お風呂に入れるのも毎晩大変。お風呂の楽しさを、演劇を交えて伝え「よーし、じゃあ、おててを繋いで一緒にお風呂に行こうか~!」なんて言いながらスムーズに入ってくれたらラッキー。ぎゃーぎゃー騒ぎながら無理矢理入れなくてはいけない日もある。

こうして文字にしているとちょっと笑えるし、とても愛おしくも思えるのだが、その場にいるとどうもイライラしてしまうことが多い。

そして私の睡眠不足と息子のイヤイヤが重なったある日、私は爆発してしまった。詳しいことはあまり覚えていないのだが、息子に対して大声を張り上げてしまった。恥ずかしながら「怒りを爆発させた」という表現がしっくりくるであろう。仕事前のパパがすかさず仲介に入り、私は寝室で休ませてもらった。久しぶりに布団を頭から被って「私を探さないでくれ」と願いながら休んでいた。
そして布団の中でいろいろなことを考え始めるわけだが、その中であたまに浮かんだのが「小学生を持つ親御さんはもっともっと大変な思いをしているのだろうな」ということ。我が子はイヤイヤ期とはいえまだ2歳児。困ったら最悪、無理矢理抱っこをしてしまえばなんとかなる。

でも息子が小学生だったら……と想像するだけで恐くなる。

我が家は共働きだから、日中親がいないことをいいことに、息子はずっとゲームに明け暮れていそう。朝家を出る時に「やっておきなさいね!」と伝えておいたことが、帰宅時全く終わっていなくて毎日口喧嘩になるんだろうな。

そんなことを布団の中でぐるぐるぐるぐると考えていた。

そして「息子が小学生だったら」と妄想を繰り広げている時に、ふと、「そうか、私は塾で働く者として大変な思いをしている親御さんをサポートする立場にあるんだ」と当たり前のことを思い出した。



啓明館では3月以降、在宅受講プログラムを提供している。

2.3年生は週1回の映像配信授業と後藤塾長の特別zoom授業。私は2年生の国語を担当しているが、画面の前にいる生徒がしっかりと集中して取り組めるよう、なるべく普段の授業と変わらない声がけを心がけている。生徒がペースを掴めるよう「音読してね」「問題解いてね」「赤ペンを持ってね」「姿勢を正してね」と細かく指示を出す。そして生徒がだらけぬよう、説明過多になることを避けてなるべく最小限のことばでの解説を意識している。

4年生~6年生はzoomでの授業。生徒・教師双方のやり取りが可能になったことでより通常の授業に近い形で学習を進められており、保護者の方々からたくさんの感謝の言葉をいただいている。

2歳児の新米ママと、啓明館生ママとは年期の入り方が違うのは承知の上で、ママ目線からいろいろな発言をし、在宅受講プログラムをさらに良いものにするお手伝いがしたいと思った。



決意を新たにした頃、寝室の扉が開き息子が入ってきた。そして

「…まま……ここにいるよ」

とひとこと言い残して出て行った。

この瞬間、ふっと力が抜けるのを感じた。たったのひとことではあるけれど「さっきはごめんね。しっかり休んでね。元気が出たら戻ってきてね。リビングで待ってるからね。ずっとここにいるからね。」と言われているような気がした。自分自身を情けなく思う気持ち、ごめんねと思う気持ち、いろいろな感情が入り混じった。

大丈夫だよ。私もここにいるよ。

うん、それと、ありがとね。

もっと頑張るね!