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ホーム > 塾長 後藤卓也のつぶやき > 予習と復習、どっちが大切

予習と復習、どっちが大切



2派に分かれる有名大手塾

私たちの塾の入塾説明会の最後の「Q&Aコーナー」で、「この啓明館は予習主義ですか、復習主義ですか」という質問を保護者から受けることがよくあります。

私は一応、教育学部の出身で、博士課程を修了するまで教育学を学びましたが、実は予習・復習主義といった用語は聞いたことがありません。実際、そんな「主義」は学習理論に存在しませんし、高校受験や大学受験でこうした「主義」を掲げている塾や予備校を耳にしたこともありません。

中学受験の子供を持つ保護者たちがどちらの「主義」なのかを気にして質問するのは、大手A塾が「復習主義」を、別の大手B塾も「予習禁止」を掲げ、他方で老舗の大手C塾が「予習××××」というメインテキストを刊行しているからでしょう。

「有名大手塾は2派に分かれている。啓明館はどっち派なのでしょうか」と問われているわけですね。ちなみに私はこんなふうに答えます。

「私たちの塾が一番大切にしているのは授業です。学年や教科によって異なりますが、授業を受けるために最低限必要な予習は課しますし、いかに復習が大切かは子供たちにも保護者の方にも繰り返し語っています」

「予習は子供が自分で出来るレベルまで」

私にとってはごく当たり前の回答ですが、大半の保護者も「そうですよね~」という反応を示してくれます。ただ必ずといってよいほど、家での学習について次のような質問が続きます。

「我が家は共働きで、下に幼い弟妹もいるので、勉強を見てあげることができません。自分で予習ができないような子は授業についていけないのでしょうか」

(ここから先は基本的に算数を念頭に置いて語ることにします。「予習」の是非によって学習方法が一番大きく変わるのは算数ですし、何より保護者が一番心配しているのも間違いなく算数だからです)

上記の保護者の質問に対して、私は「予習は自分で出来るレベルまでで十分です。もし3番の問題まで全員が理解できていれば、解説は4番から始めるし、1番からお手上げなら1番から解説します」と答えます。

そのうえで、「『親が算数を教えるのは原則として禁止』というのが、啓明館でのお約束です」と伝えます。ここまで話すと、保護者の皆さんにはだいたい納得していただけます。(なぜ「親が教えるのは禁止」なのかはまた別の機会に書くことにします)

授業が一番大切、家庭学習は短く効率的に

先に紹介した大手C塾は、メインテキスト「予習××××」を使っていますが、実は「予習主義」という言葉は掲げていないし、復習は無用とも言っていません。予習→授業→復習→テストというサイクルで毎週テストがあり、カリキュラムを消化していきます。学習方法に関して、予習主義か復習主義かは争点になっていません。

一方、大手A塾はホームページで教育方針として「復習主義」を明示し、大手B塾は「学びかたで大切なのは『予習』ではなく『ふり返り』」と指摘する教育書も出しています。しかし、これらの塾のホームページなどを見ると、予習をせず初めて受ける「授業に集中する」、そして「未知の学習分野の知的好奇心をかきたてる」ことの大切さも強調しています。

文科省の新しい学習指導要領では、知識を詰め込むのでなく、「自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、判断して行動する」力を育てることを基本に置いています。その理念とも合致しているように見えます。

A塾もB塾もC塾も、私たちの塾とは比較にならないほど多くの生徒数と進学実績を誇る大手塾ですが、実はこの三つの塾の中学受験の責任者の方々とは毎年一緒に大きなセミナーを開催している「仲間」でもあります。それぞれに「理」があるし、互いに学ぶべき点も多いと思っています。

「××主義」の是非や優劣とは関係なく、前述したように、私たちの塾では授業を一番大切にしています。生徒には必要な予習を課し、復習の大切さも話していますが、家庭学習では次の2点が重要だと私は思います。

▽家庭学習の時間はできるだけ短くする(効率のよい学習方法を塾としても提供する)▽家庭学習を親任せにせず、子供が自分でやるようにする(親子ゲンカも、塾を掛け持ちするダブルスクールも減らすことになる)

そうした学習のあり方は、受験勉強以外のさまざまな学びや体験、遊びの時間を確保し、少しでも楽しく、自分で自分のために勉強する子を育てることにもつながります。

「東大王」学習法は予習重視、「できる子」ならOK

ところで、今年3月に放映されたTBS系の情報バラエティー番組「中居正広の金曜日のスマイルたちへ(通称・金スマ)」に、クイズ番組「東大王」で活躍する東大生4人が出演し、成績を上げる勉強法について「復習よりも予習を重視」とそろって答えたそうです。

「予習で先取りして、人より先に進むことで優越感や余裕が生まれる」「予習で理解しておけば、学校の宿題もすぐ終わり、自分の好きなことができる」「授業が復習になり、繰り返し学ぶスパイラル学習につながる」などがその理由です。

家庭学習で「予習」が占めるべき割合は、その子の学年や教科、習熟度、そして志望校によっても異なります。また、本人の性格や家庭環境によっても異なるでしょう。

あえて「復習主義」の難点を挙げるとすれば、「未知の問題に取り組む」だけの学力のない子は、授業を楽しむことができず、手つかずの課題を消化するために親がかりとなり、「復習」に追われる危険性があることです。

逆に「東大王」たちの学習法に関しては、「予習で理解する」だけの学力があることが前提となっています。つまり「できる子」はもっとできるようになるけれど、「その他」の子供たちは、予習であれ復習であれ、結局は保護者任せや、塾を掛け持ちするダブルスクールになってしまう。

それでは、仮に「志望校合格」は果たせても、「中学受験の経験を通して子供が成長する」という大きな目標からは遠ざかっていくのではないかと危惧します。

コロナ禍でオンライン授業、塾の競争は歓迎すべき

私たちの塾では、予習・復習両方の映像授業を充実させることで、子供たちが少しでも「楽しく、効率的に、自分で勉強する」ための努力をしてきました。コロナ禍の影響もあり、多くの塾や学校も映像配信やオンライン授業の充実を進めています。こうした努力と競争は歓迎すべきことでしょう。

私たちもさらなる進化のための努力は惜しみませんが、「家庭学習の充実」と「子供と保護者の負担の軽減」の実現のためには、中学受験のあり方そのものを考え直す必要もあるのではないかと考えています。いずれこの問題についても、詳しくお話しする機会を持ちたいと思います。
(中学受験サポート2020年11月)