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ホーム > 塾長 後藤卓也のつぶやき > 自分の子供時代を振り返り、我が子に接しよう

自分の子供時代を振り返り、我が子に接しよう



だらだら集中せず・字も汚い、小4男子の保護者の悩み

私たちの塾で先日、映像配信による4年生のオンライン保護者会を行ったあと、ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」で面談をしました。このとき話を聞いたのは、男の子の保護者ばかり数人。入塾した途端のコロナ禍のため、塾長である私の話を聞く機会がなかったので「せっかくだから」という感じで、深刻な相談はほとんどなく、「主訴」はほぼ次の3点でした。

(1)こちらから声をかけないと机に向かわない。椅子に座っても、いつまでもだらだらしている。
(2)集中力がない。ONとOFFの切り替えがうまくできない。勉強を始めても、すぐに気が散る。
(3)字が汚い。数字をきちんと書かないせいで、計算ミスを繰り返す。

個別の質問にも答えましたが、私が直接指導をしていない子たちなので、結局は「一般論」として次のようなやりとりを繰り返すことになりました。

後藤「自分から進んで机に向い、ONとOFFを切り替え、字を丁寧に書く4年生の男の子なんていません。6年の夏期講習前の個人面談でも、男子の保護者全員が同じことを訴えますよ。字の汚さなんて、ある程度直っていくのは、せいぜい入試の3か月前。志望校の過去問に真剣に取り組み始めてからですね。『数字が汚いせいで7点落とした。だから合格最低点に届かなかった。お前、それで平気か?』ってね」

保護者「そんなものなんですか……。長男が初めての受験なので、どうしても心配になって」

後藤「親として心配になるのは当然です。でも、親目線で見るんじゃなくて、ご自分が4年生の時と比べてみてください。週3日も塾に通って、こんなに難しいことを勉強して、それでも塾が大好きなんて、それだけでもスゴいなあ、エライなあと思いませんか?」

保護者「そうですね。私なんて夏休みは毎日朝から晩まで遊んでいましたから。これからは、もう少し長い目で見守っていくことにします」

「我が子の欠点」は子供時代の親自身にそっくり?

今回、たまたま同じような男の子の保護者と出会ったわけではなく、4年生男子の親の悩みといえば、ほぼこんな感じです。例年だと、この時期には塾のスクリーンに「保護者からの質問」を映し、それに答える形の保護者会を行いますが、「全部ウチの子に当てはまっていて、とても参考になりました」「みんな同じ悩みを持っているんだと思って、少し安心しました」というアンケートの回答がたくさん返ってきます。

実は2年後の6年生の個人面談でも、保護者にはまた「ご自分の子供の頃を思い出してみてください」と問いかけます。6年生にもなると、成績も学習態度も性格も千差万別ですから、「一般論」だけでは片が付きません。そのかわり、保護者にはこう尋ねます。「今お話しになったA君の短所って、ひょっとしてお母さまご自身か、もしくはお父さまとそっくりだったりしませんか?」

これはインチキ占い師の常とう手段みたいなもので、誰だって子供の頃の失敗談の一つや二つは持ち合わせていますから、「確かにそう言われてみれば」という気持ちになるものです。

ただ、塾で教えるこの仕事を30年以上もしていると、やっぱり親子ってよく似てるなあと感心します。顔だけじゃなくて、いいところもダメなところ(失礼)も似ている。血のつながっていない父母同士まで「そっくり夫婦」に見えて、同じものを食べていると性格や顔も似てくるのかなと思うことさえあります。

顔や体格が似るのは遺伝でしょうが、生まれた後に環境の影響や鍛錬などによって身に付けた「獲得形質」は一般に遺伝しないとされています。それなのに、性格や欠点まで似てしまうのはなぜでしょうか。逆に共通の遺伝子を持ち、同じ生活環境に育ったきょうだいの性格が全然違ったりするのに。

「似てほしくない」と叱ることで傷つける子供の心

発達心理学的にはいろんな説明があるのでしょうが、例えば父親が自分の性格、特に幼い頃からの欠点を思い浮かべ、意識的か無意識かの差はあるにせよ、「ここだけは似てほしくない」と思って息子をしつけようとする。もしくは母親が「これだけはパパに似ないで」と思って我が子を叱る。ところが、そんなふうにしつけようとすればするほど、逆効果になるケースが多い。

男の子は幼い頃、大好きなパパのちょっとしたしぐさや言葉使いをまねし、同一化しようとするものです。「三つ子の魂百まで」と言うように、何歳になっても「子供の頃の自分」は、ふとした時に姿を現す。すると、ママがパパに似ないでほしいと思って「××しちゃダメ」と言えば言うほど、その子は「自分の写し絵」みたいなものをパパの中に見いだし、シンクロしちゃうんじゃないかと思うのです。

「似てほしくないと思ったところほど、子供は悲しいくらい自分に似てしまう」。それは、30年を超える塾での指導歴に加えて、自分自身の子育てを通して痛感していますが、仮にそれが事実だとしたら、似てしまったものは仕方ありません。ただ、自分(もしくは配偶者)に似ているからこそ、過度に感情的に叱責(しっせき)してしまうケースが多いことは忘れないでください。子供たちは、実はパパやママのまねをしている場合が多いのだから、それを全面否定するような叱り方をすると、深い傷を残す危険性があります。

「一番ステキなところ」受け継がれていると気付く

虐待を受けた子供が、親になった時に虐待をしてしまう「児童虐待の再生産」については調査も進み、実証例も多数報告されていますが、再生産されるのは虐待だけではないと私は思います。

自分はどんな子供だったのか。今思い返してみて、どんな長所や短所があったのか。褒められてうれしかったことや、逆に今でも思い出したくないくらい嫌なことなど、かなり恥ずかしいでしょうが、夫婦でお互いの子供時代の思い出話をしてみてはいかがでしょうか。そうすればたぶん、我が子を見る視点や我が子にかける言葉も、少し変わっていくはずです。

「そういえば自分もよくオヤジに叱られて、でも気が小さいから、いつまでもウジウジいじけていたっけ。でも母さんが取りなしてくれて、目に涙を浮かべて『ごめん』って言ったら、オヤジ、すごく優しい顔で頭をなでてくれたなあ」「あの子を見ていると、子供の頃のあなたがウジウジしている様子が目に浮かぶわね……」。テストの結果が悪くてウジウジしている息子を叱る前に、そんなふうに、まずは昔の自分を振り返ってみましょう。

「子供の褒め方・叱り方」みたいな子育てのノウハウ本に頼るのではなく、自分自身が子供だった頃のことを思い出す。我が子の表情や言動をちゃんと見つめて、自分たちにしかできない褒め方・叱り方をする。効果はすぐには表れないでしょうが、常にそうした接し方を心がけていれば、きっといつか「似てほしくないと思ったこと」だけでなく、「一番ステキなところ」も受け継がれていることに気付く時が来る。

そして、やがてはお子さんとお孫さんの間で、それが「再生産」されていくのではないでしょうか。
(中学受験サポート2020年8月)