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ホーム > 塾長 後藤卓也のつぶやき > 初Zoom体験「双方向性」オンライン授業の意味

初Zoom体験「双方向性」オンライン授業の意味



画面越しに盛り上がる生徒に準備の疲れ吹き飛ぶ

このコーナーの前回コラム「コロナ休校の今、最優先にするべきこと」で紹介したように、新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、私たちの塾「啓明館」の小学6年生は、4月から通常通り週4日の授業を受けています。クラス編成や担当講師、授業時間数もそのまま。ただし教室ではなく、ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」による双方向の遠隔授業です。そして5月からは4、5年生も「ズームイン!」となり、各学年で順次オンライン授業が始まりました。

そこで私にも出番が回ってきました。担当したのは小学2、3年生で、「基本は算数と理科だけど、楽しければ何でもあり」という「塾長特別Zoom授業」です。今回のコラムでは、これまでインターネット通話「Skype(スカイプ)」すら使ったことのない旧石器時代のようなオジサンが、生まれて初めてZoom授業をした体験を語ることにします。

記念すべき私の最初の特別授業は、5月16、17日の土日に計3回実施し、のべ100人弱の塾の生徒たちが参加してくれました。

まずは「補数」を利用した足し算の暗算練習、次に「推理算」と呼ばれるパズル的な問題、そして「糸電話と風船電話を作ってみよう」という3部構成。

「風船電話」とは、バルーンアート用の細長い風船の両端を、底に穴を開けた紙コップに差し込んだもので、作るのはすごく簡単だし、糸電話よりずっとよく聞こえます。そして、せっかく風船を膨らませたのだから、最後にみんなでキリンのバルーンアートも作りました。

実は私、子供の頃から、手先の不器用さに関して誰にも負けない自信があります。本番前日の深夜、初心者向けの解説DVDを見ながら練習したのですが、キリンのバルーンアートを作る前に、まず膨らませた風船の口を縛る手際を覚えるだけで30分以上かかりましたから。

本番でも、失敗したらどうしようとドキドキものでしたが、キリンの頭を作って見せただけで「お~っ」という反応。画面の向こうで風船と格闘する子供たちの姿を見て、疲れがすべて吹き飛ぶ思いがしました。

映像授業とは別次元、リアルタイムな双方向性の手応え

私は塾教師として15年以上前から映像授業配信の企画や出演に携わってきましたが、Zoom授業が映像配信とはまったく別次元のものであることを痛感し、ICT(情報通信技術)の進歩に素直に脱帽しました。

決定的な違いは言うまでもなく「双方向性」です。今回は教師・生徒ともにZoom初体験。しかも、これまで教えたことのない子供たちばかりなので、一人一人に声をかけたり、発言させたりする機会も不十分だったと思います。だから「これが双方向性オンライン授業なのだ」と胸を張って語る資格はありません。

でも、ホワイトボードに答えを書かせて、クイズ番組のように「それでは、一斉に解答オープン!」と盛り上げると、正解した子供たちは、こちらがうれしくなるようなガッツポーズをしてくれます。キリンのバルーンアート作りはお母さん任せで、ずっと手で耳をふさいでいる子もいれば(その気持ち、よ~く分かるよ)、「割れました(泣き顔の顔文字)。明日また買ってきて挑戦します」というメッセージを送ってくれる子もいます。

最終回の授業後、ほぼ全員が退室したところに6年生のA君が入ってきました。事情を聞くと、弟のタブレット型端末が充電切れで、最後のキリン作りが見られなかったとのこと。いいお兄ちゃんだなあと感心しながら2人のために、もう一度「補講」をしました(2人そろって、首まで完成したところで破裂してしまったのもご愛きょうです)。こんなハプニングも含めて、やっぱりリアルタイムの双方向のやりとりは楽しい。

しかし、実を言うと初Zoom体験で一番印象深かったのは、子供たちの表情や反応を見ながら授業ができることでも、双方向のやりとりができることでもありませんでした。

子供の反応を見て、子供たちとやりとりしながら授業をする……。それ自体は30年以上、塾教師として毎日、教室でやり続けてきたことです。それがこんなに簡単にオンラインで実現できるのは本当にすばらしいし、映像配信+Zoomの組み合わせなら、集団授業にかなり近い水準の指導ができると実感できたのも確かです。

生徒全員の横に親がいて授業の様子が一目瞭然

しかし、私が一番、「Zoom授業のスゴさ」を実感したのは、「生徒全員の横に親がいる」ことでした。

「塾長特別授業」などと偉そうなネーミングにして「誇大広告」のような案内文を送ったのも、バルーンやカッターナイフを用意してもらったのも、「Zoomの設定が終わったら、あとはタブレットに子守りをお任せ」ではなく、お父さん、お母さんに一緒に参加してほしかったからです。

保護者のみなさんは、学校や塾でどんな授業が行われているか、我が子がどういう姿勢で授業を聞いているか、これまで自分の目できちんと確認できた経験があるでしょうか? 学校はせいぜい年1、2回の授業参観。塾はお弁当を届けたりした時に、廊下から教室内の様子をのぞくのが関の山でしょう。

それなのにテストの成績が返却されると、「なんだ、この点数は!」「ちゃんと宿題をやれって何度も言っただろう!」と叱る。成績が伸びない理由は家庭学習の不足ではなく、教師の授業が下手なせいかもしれないし、授業の聞き方やノートの取り方に問題があるのかもしれない。授業中、すぐに手遊びを始めたり、居眠りをしたりしているかもしれないし、だとすればそれを放置する教師の力量にも問題がある。そうした実態を把握するには、毎日、廊下から教室内の監視を続けるか、隠しカメラを設置するか。どちらも不可能ですよね。

ところがZoom授業なら、お父さん、お母さんが自宅で好きなだけ「実態」を確認できます。我が子がちゃんと授業に集中しているのか。内容を理解しているのか。教師の教え方がうまいかどうか。どんなふうに子供たちを褒めたり、叱ったりしているのか。すべて一目瞭然。

今はどの塾もZoomの導入を進めているようなので、他の塾に通わせているママ友同士で、各塾のZoom授業の「鑑賞会」をすれば、きわめてリアルに「塾選び」をすることができるでしょう。つまり、私たち塾関係者にとっては、自分たちの真価が問われるピンチであり、チャンスでもあります。

ちなみに、広尾学園(東京・港区)のホームページには、各教科のオンライン授業から、週1回のオンライン部活、オンライン生徒面談まで、教師たちが取り組む様子を紹介する動画がアップされています。ぜひ他の私学でも、ベテランから若手までいろいろな教師の、そしてその学校ならではのオンライン授業風景を公開してほしいと思います。それは学校選びの貴重な手がかりとなるでしょう。

子供、教師、保護者、誰にも気付きのチャンスに

私たちの塾の授業研修では、繰り返し「生徒ではなく、生徒の後ろにいる保護者に、想おもいや熱意が伝わる授業をしろ」という指導を受けます。教室内にいる生徒たちに「分かりやすい」「面白い」と思わせるのは、プロとしてはごく当たり前。家路につく子供たちの笑顔や、「きょう、〇〇先生の授業でね……」と家に持ち帰ってくる「土産話」を通して、保護者に感動を与えることができて、初めて一流の教師だと。

Zoom授業のすごさと怖さは、その「手応え」がリアルタイムで分かることです。横に映っているママが「へぇ~」という納得の表情をしてくれたか。弟や妹が「ボクもやりた~い」と画面をのぞき込んでくれたか。授業後にご両親がチャットやメールでどんな感想を書いてくれたか。まさに一期一会。一回一回の授業が真剣勝負であることをあらためて思い知らされたのが、私にとって初Zoom授業最大の成果でした。

「親子で一緒に授業を受ける」ことの意義はほかにもあります。我が子がどれだけ難しいことを勉強しているのかを知る。3時間以上も授業に集中している我が子の姿に感動する。逆に子供たちも、両親や弟が隣にいるから、普段の教室では見られないような集中力を発揮し、それが成長のきっかけになるかもしれません。

小学4年生以下の子供たちの多くは、まだ親と一緒に勉強したがります。でも、普段の家庭学習では「親が教えてしまう」結果になることが多い。Zoom授業ではパパもママも生徒の立場。一緒に勉強して、パパより先に問題が解けたり、ママの知らないことを答えられたりすると、すごくうれしい。

映像配信+Zoomなら、塾や学校の授業を「かなり補える」のは確かです。でも、双方向性のオンライン教育を、塾・学校に通えない分の「代用品」と考えるのはもったいない。我々教師にとっても、保護者にとっても、子供たちにとっても、いろいろな気付きや反省の機会として、これまでの教育のあり方を抜本的に見直すチャンスとして、お互いに意見や感想を交わしながら、もっと前向きな気持ちで活用していきたいと思うのです。
(中学受験サポート2020年6月)