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ホーム > 塾長 後藤卓也のつぶやき > コロナ休校の今、最優先にするべきこと

コロナ休校の今、最優先にするべきこと



保護者や学校が不安がる「学習の遅れ」って?

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う学校の一斉休校。テレビのインタビューに答える保護者は「4年生の算数の教科書が最後まで終わっていません。どうしたらいいんでしょう」などと、「学習の遅れ」への不安を口にします。

「学習の遅れ」って、何に対する「遅れ」なのでしょうか。確かに学習指導要領は、何年生で何を学習するかについて定めており、教科書はそれに基づいて作成されています。だから休校が続いたら、その分だけ「遅れて」しまう。でも「一斉休校」なのだから、未習単元が生じるのはどのクラス、どの学校でも同じ。我が子だけが周りから取り残され、遅れていくわけではありません。

おそらく保護者が不安に感じているのは、自分でちゃんと勉強する子や塾に通っている子と比べて、「(学校でしか勉強しない)ウチの子は遅れてしまう」ということなのだと思います。その気持ちはよく分かります。

他方で、学校や教育委員会も、「学習の遅れ」に対する懸念を表明しています。「5月中旬までに学校を再開できれば、夏休みの短縮や土曜日の補習で何とか遅れを取り戻せるが、それ以上は厳しい」。東京・多摩地区の公立中の校長がそう漏らしたという新聞記事を目にしました。

カリキュラムにこだわる授業再開はNG

でも、「5月中旬までの学校再開」を求める根拠は何なのでしょうか。もし「定められた年間授業時間数を消化し、教科書を終わらせること」が「遅れを取り戻す」という意味だとしたら、そんなことのために、この非常事態下で授業再開を強行するなんてあり得ないと私は思います。

同じ記事には、小学5年担当の教員が「通常は4月中に小数第3位までの数字の概念や計算を学ぶが、全くできていない」という声も掲載されていましたが、普通に授業をしても、小数が理解できない子はたくさんいるし、その逆の子も大勢います。少なくとも自分で教科書の学習ができる子は、安全が確認されてから登校を再開しても「学習が遅れる」心配はありません。

もちろん学校生活には、集団行動のルールを学ぶとか、親から自立し、同年齢集団で過ごすとか、いろいろな意義があるので、「勉強ができる子は学校に来なくていい」と言っているわけではありません。

ただ、学習の到達度は個人差が大きいのだから、少なくとも「学習(カリキュラム)の遅れ」を取り戻すという大義名分のために、授業再開を強行するべきではない。その判断は医療や公衆衛生の専門家に任せて、「今、教育者として我々に何ができるのか。何をするべきなのか」を考えるべきではないかと言いたいのです。

オンライン授業も手作り課題も「精いっぱいに」

私学関係者や塾の卒業生の保護者に話を聞くと、私立中高一貫校では、「ダンボール箱で教材が届き、メールで学習方法の指示があった」「大手B社かR社の映像配信授業を視聴するように指示があった」といった対応が多いようです。でも、3月からすでにウェブ会議サービス「Zoom」や学校向け学習管理ツール「Google Classroom」で、オンライン授業を始めている私学もあります。

全学年・全クラスで、毎日6時限のオンライン授業を実施する学校の教員のプロ意識とスキルの高さは、文句なく素晴らしい。でも、そうした設備を整える余裕はなくても、毎週、山盛りの手作りプリントとともに、校長や担任からメッセージが届く。そんな学校もすてきです。小規模な私立校は人手が少ないけれど、学年や教科の数は同じだから、教材作成の手間は変わらない。印刷・製本・発送も全部自分たちでやる。手が空いたら生徒に電話をしたり、メールを送ったりする。授業を再開したいのは山々だけど、「まずは、今できることを精いっぱいやる」。

かくいう私たち学習塾こそ一刻も早く手を打たなければ、授業料はもらえないし、退塾者が続出する。この点では学校よりもずっとシビアな事態です。詳しく説明すると長くなるので省略しますが、以前から映像授業を積極的に活用してきた塾として、私のインタビュー記事が、働くママの情報サイト「CHANTO WEB」に2回にわたり連載されたので(ちょっと宣伝臭がして恐縮ですが)、参考までにご一読ください。(特集「教育の新潮流・オンライン学習が知りたい」連載1回目連載2回目

「毎日ちゃんと勉強を」今こそ子供にメッセージを

他方、公立校でオンライン授業を始めているのは、東京・港区などまだ一部のようです。公立校なら学習の内容も進度もほぼ同じなのに、なぜ足並みがそろわないのでしょうか。「端末が足りない」とか「セキュリティーの問題が……」と言うなら、テレビでも何でも使って全国に配信すればいいと思うのは、私の発想が単純過ぎるからでしょうか。

地域差や家庭環境による格差は避けられないかもしれませんが、早期に学校が再開されるなら何も問題はないし、逆に一斉休校がさらに続くなら、それこそ少しくらいのタイムラグには目をつぶって、「学校が休校でも、毎日ちゃんと勉強するんだよ」というメッセージを、早く子供たち全員に伝えてほしい。

勉強することの大切さと楽しさを分からせるように、本気で語りかけてほしい。そしてその上で、自宅でちゃんと学習できるようなツールとコンテンツを提供してほしい。それは「学習が遅れないようにする」ためではなく、「学ぶことを止めない」ためです。

将来の「地球の危機」救う時に備え成長を

みんな、ちゃんと毎日勉強していますか?お出かけできないとか、友だちと遊べないとか、ずっとウチにいると、きょうだいゲンカになるとか、いろいろつらいこともあると思うけど、でも毎日ちゃんと勉強しなさい。

みんなが同じ時間、同じことを勉強する必要はありません。他の子より遅れてもかまわない。テストの点数で競い合う必要もありません。計算や漢字は全員が勉強したほうがいいと思うけれど、本や図鑑を読んだり、ビデオで映画を見たり、絵を描いたりするのも、また、料理や洗濯の手伝いをするのも大切な勉強だから。

ただ、今、どうしても君たち全員に学んでほしいことがある。たとえば「ウイルスって何なのか」ということ(できれば野口英世博士の伝記くらいは、マンガでもいいから読んでほしい)。そして、「みんなで決めたルールを守らないと、どんなに大変なことが起こるのか」「君たちの生命や健康は、誰のお陰で守られているのか」ということも。

今すぐには難しくて分からなくても、少しずつ勉強して、君たちが大人になるまでに学んでほしい。いや、学ばなければならない。

なぜならば、今回の新型コロナウイルスの問題はいずれ誰かが解決してくれると思うけれど、たとえば20年後か30年後にまた未知のウイルスとか、9年前のような大震災とか、巨大隕石いんせきの衝突とか、人類が滅びそうな危機がやってきた時に、自分の家族や社会や地球を守るのは、君たちなのだから。

君たちの出番が回ってくる時のために、毎日ちゃんと勉強し、成長し続けてほしい。もし「そのとき」にまだ僕が生きていたら、ヨロシクな。頼みにしてるぜ。
(中学受験サポート2020年5月)