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ホーム > 塾長 後藤卓也のつぶやき > 震災や新資源 今こそ重要

震災や新資源 今こそ重要



高校で存在感ない地学

2泊3日の箱根旅行に行った。ケーブルカーで大涌谷に行き、遊覧船で芦ノ湖を渡る。あとは温泉につかり、のんびり本を読みながら食事と酒を楽しむだけ。5月の休暇も全く同じ旅程だったが、幼い頃から毎年家族や親戚と訪れた土地なので、旅行というより里帰りに近い感覚だ。

最終日は必ず箱根から戻る途中、小田原市入生田にある神奈川県立生命の星・地球博物館を訪問する。派手な展示物はないが、化石や岩石の標本、火山活動や地殻変動の解説パネルをみているだけで楽しいし、勉強になる。地学の魅力を堪能できて、何時間いても飽きることがない。

ところが高校理科の4分野で、地学ほど軽視されている科目はない。大学入試センター試験受験者のうち、化学を選択するのは20万人、物理が15万人、生物7万人に対し、地学はわずか2千人である。私大文系向けの「地学基礎」の受験者は5万人いるが、2次試験で地学を選択できる学部はごく一部なので、中高一貫の進学校では「高校地学」という科目自体が存在しないことも珍しくない。

東日本大震災はわずか7年前、御嶽山噴火は4年前、今年は西日本豪雨で記録的な被害を受けた。これだけ「地球科学」研究の必要な国は世界でも例をみないのに、他方では、メタンハイドレートや地熱発電など、近未来の社会に不可欠な研究課題が山盛りなのに、地学受験者が2千人ってどういうことなんだろう?

地学研究を重視し、独自の取り組みを実践している私立学校もある。ここで内容を詳細に触れるだけの余裕はないが、例えば麻布・武蔵・桐朋・成蹊など、どちらかといえば「時代の趨勢」より「不易流行寄り」が校風の学校の方が、地学教育に力を入れているようにみえるのは、単なる偶然なのだろうか。

こんな時代だからこそ、目先の流行にとらわれず、両足でしっかりと大地を踏みしめ、目の前の危機に立ち向かう人材を育ててくれる学校が必要なのだと、私は思う。
(日経新聞2018年10月)